偶然の発生

シンクロニシティという言葉を聞いたことがあると思います。意味のある偶然の一致という概念ですが、そもそも、偶然とは何をもって偶然なのでしょうか。

私は、偶然という事象が招いた結果のシンクロニシティは、存在しないと考えています。

では、意味のある偶然は、どのタイミングで発生するのかということになります。

コイントスを思い浮かべてみてください。コインは表:裏=1:1ですので、コイントスを行うと、当然ながら表と裏はどちらも50%の確率で出ると思っていないでしょうか。

実は、50%の確率にならないのです。

2009年のスタンフォード大学による研究で、コイントスの表裏の出る確率は、最初に上を向いていた面が51%となる結果が示されました。コインの材質には一切依存せず、コイントスという行為そのものによる結果だそうです。

コイントスという行為には、人それぞれ異なる力・角度・回転数などのランダムな要素が加味されるわけですが、あくまでも最初に上を向いていた面という「初期要因」が、コイントスの結果に偏りを生じさせているわけです。人が感覚的にランダムと思われる現象であっても、実際にはランダムではなく、なんらかの要因に支配されていた結果ということを意味しています。

宇宙の誕生直後は対称性を有していたが、何らかの要因によりCP対称性の破れが生じ、現在の宇宙は反物質がほとんどない世界となった様に、結果を生じさせる初期要因が存在するという事実を考慮する必要があるわけです。

つまり偶然と思う様な事象であっても、何らかの初期要因に依存した必然的な結果であり、初期要因を制御することにより意味のある偶然を生じさせることも可能と言えるのです。

さて、ここからが重要な部分で、偶然とは、人がなんらかの判断による現象の評価結果であるということです。同じ場面で同じ事象が発生していたとしても、ある人にとっては偶然であっても、別の人には偶然と思わないかもしれません。

そして、評価が、次の事象の初期要因となる場合が多いのです。

結局これは、引き寄せの法則なのです。引き寄せの法則とは、評価を積極的にすることにより、あたかも次の結果(良くも悪くも)が偶発的に且つ連続して生じているという錯覚を得ましょうということです。シンクロニシティという言葉を多用することで、間違った偶然(良いと感じれば良いことが起き、悪いと思えば悪いことが起きる)という主観的な解釈を内包する評価方法であり、私はあまり好きになれません。

引き寄せの法則を好きになれない理由は単純で、そもそも事象の評価をしましょうと言っているにも関わらず、引き寄せできなかった時にはやり方がマズイという方法論に話がすり替わってしまうからです。これでは、勝てば官軍と同じで、道理はどうあれ上手く言ったら正義になってしまいます。

何度も言いますが「人生万事塞翁が馬」です。好調と思っていても思いがけない不調が待っています。従って、発生した事象に対して、その都度評価をしても意味がないんだよ、という昔の人の知恵です。

M theory において、評価をしてはいけないという意味を、何となくわかっていただけるでしょうか。